いまでもこんな考え方をするひとがあります。
「こどものころから2か国語を使っていた人はどちらの言語も深く習得することはできず、口先ではぺらぺらと自由に言語を操るが、思考力や理解力が浅く能力が中途半端だ。」
なんとなく真実っぽい響きを持つ意見ですね。
テレビで見るバイリンガルのタレントさんたちを見ても、頭が悪そうだし...ほんとかも...。
バイリンガルと知能の問題はとても複雑で、実験することさえ、難しい問題です。
経済や人種問題、政治などの影響をもろに受ける問題なのですね。
「バイリンガルは知能が劣る」という意見が世の中ばらまかれ始めたのは20世紀の前半のこと。
当時のアメリカでは、移民を制限したいという強い目標がありました。
そのため移民局では移民に知能テストを受けさせ、能力の高かったものだけを受け入れるようにしました。
知能テストの内容は英語の語彙力や文章力など。
当然、移民としてやってきたバイリンガルの人々の能力は劣るという結果になります。
それを英語のハンディキャップとはとらえず、バイリンガルの知能が低いという結論に結びつけたわけです。
その後の研究でも、モノリンガルとバイリンガルを比べる際の被験者は、モノリンガルは白人の上流階級のこども、バイリンガルは移民の貧しいこどもを集める、というような公平でないものが多かったようです。
そんな昔の政治のコントロールにいまでも惑わされるひとが多いのです。
逆にバイリンガルのほうが知能が優れるという意見は20世紀後半から増えてきました。
しかし、これも社会の流れと大きな関連があります。
カナダでフランス語の権利を認める言語法が成立し、その流れでこどもをバイリンガルに育てたほうが有利になったのです。
そのため、バイリンガルの教育は素晴らしいということを教育者たちは盛んに宣伝したのですね。
バイリンガルと知能の関係の問題はそういうふうにしてコントロールされてきたのです。